愛なんて知らなかった

知ろうとも思わなかった

…欲しいとも、思わなかった。


多分、俺とアイツが違ったのはそこだけだ


全て、同じで。

相似しすぎていた所為なのか、それとも。


俺たちは 一瞬の視線の交わりで惹かれはじめた










My desire for... ― 糸 ―










一番初めのデアイは、街中のラブホ街。

スッと、ある一組のカップルとすれ違った。

…俺は、無意識の内に振り向いていた。その女に視線を向けて。

すると目が合った。――その女も、振り向いたのだ、俺に。



「―――…。」



無言。

何か声をかけるでもなく、ただ 言葉を発さずに見つめ合って。

交わった視線の先の瞳は、先の見えないほどの澄んだ黒。漆黒。

綺麗なその瞳は全てを見下したように冷たくて、目が逸らせなかった

これを、金縛りというのだろうかなんて、少し考えたのを覚えている


俺とその女以外の全てが消え失せて。建物も 音も 道行く人々も…隣にいる“彼女(恋人)”でさえ。

気が付けば黒の中に2人で突っ立っていて、寂静が俺たちを包んでいて。



「景吾?何見てるの?」

現在の“彼女”が声をかけてくるまで、俺たちは動けなかった。

「いや、何でもねぇ」

ハッと金縛りが解けたように体が軽くなり、俺は彼女を連れて歩き出す


















「「 ( 何(だ)―――…今のは… ) 」」




















きっと、それがハジマリ。








































こ の 時 既 に  俺 た ち は  抜 け 出 せ な い 蜘 蛛 の 糸 に 捕 ら わ れ て い た 。










































「“ハジメマシテ”…跡部くん?」



そう口角を吊り上げて微笑んだ女を現すのなら、妖艶。…艶やかな、蝶。

1つ1つのパーツが整っていて、肌は白く それに映える唇は紅い

湿ったその唇と肌蹴た服から覗く肌は、俺を誘っているように見えて。

…俺自身、女に不自由しているわけないが、正直  それに反応していた



「…お前、服くらい直したらどうだ?」

「ああ…そうね」



全てが 今まで俺が出会ってきた女とは違う。

さすが、“艶蝶”と呼ばれるだけのことはある美しさ、そして 全てに…俺に対しても、興味の無いような瞳。

媚を売らず、それでいて雰囲気が誘っている…そんな、女


ソイツが服を直そうとボタンに手を掛けかけて、ソイツは手を止めた

そして、俺を見つめてくる


その意図が 一瞬にして理解でき、俺は心の中に【楽しい】という感情が芽生えるのを感じた。



「…なんだ?」



その視線の意味を理解しながらも、敢えて問う


「アンタが中途半端なところで止めた所為で疼くのよね」


ソイツも、それを理解しているのか至極楽しそうに口元を歪めていた



「…俺様に続きをしろってのか?」

「分かってるじゃない」



恥ずかしげもなく言ったソイツに、

( ああ。楽しい。 )

俺は咽喉で笑った

そして、笑みを深め言葉を投げる



「お前…俺にも女がいるの知ってるだろ?」


ソイツは特に表情も変えず「何故?」と返してきた


「ハッ…とぼける気か?」

「…まさか。知ってるわ。この間すれ違ったものね」



そう言って妖艶な笑みを浮かべながらソイツは俺に近づいてくる

俺はそれに応えるように、その細い腰へ腕を回した。

ソイツも、俺の首に手を回し顔を近づける


身近で見ると、より妖艶で 美しい。



「結構綺麗な顔してるのね」

おどけた風にいうソイツに、

「アーン?当たり前だろ?お前も綺麗だぜ?」

そう返すと、ソイツは楽しそうの笑み、礼を述べた

「…お前、名前は?」

それが、合図だ



「………  



どちらからともなく口付ける。

優しく触れるだけのキスなんかではなく、

熱く、激しく求めるようなキス。


これが快楽というのだろうと、俺は頭の端で考えた後、すぐに理性をぶち壊した




















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( 06,08,04 ) ( だああああ恥ずかスィイイ…!…あ、艶蝶の意味はまた出てきますので )